春眠の理由

春のにおいがして、何かを思い出しそうになった。
一日あけたら途端に、昨日のうららかさが嘘のように寒くなって春のにおいが消えてしまった。
それと同時に、何を思い出しそうになっていたのか忘れてしまった。


たった一日で、何かがはかなく消え去ってしまうなんてよくあることだ。
寝ている間に容赦なく一日の境目がやってきて、夢の中でその境界を跨ぐんだ。
そして境界の向こう側は、あっけなく過去としてファイリングされていく。
まだこんなにはっきり覚えているのに、その感覚は所詮記憶でしかない。


春とか秋とか、季節の変わり目の曖昧な空気に触れるといつも何かを思い出しそうになる。
だけど、その記憶の輪郭をちゃんと把握できたことはまだない。
おぼろげな視界にボンヤリと映るそれを把握できるときはくるのかなあ。
そんなわけで、消え去った記憶を追うのに夢中で、文字通り季節の変わり目は夢うつつなのでアル。