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- 作者: 小川洋子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/08/10
- メディア: 文庫
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物語は実に淡々と進んでいくのですが、なんだか、静かな悲しみの漂うお話でした。
小川洋子さんの本を読んだのは「まぶた」に次いでこれが二冊目ですが、些細な描写がとても美しいですね。食べ物を食べる描写とか、小物に関する描写とかを読むときいつもドキドキしてしまう。ハーモニカに香水にオルゴールにホットケーキに手編みのセーター。アイテムのチョイスも実に美しい。外国の物語を読んでるみたい。
記憶が消滅しない人々にとっては、あっさりと消滅したものを忘れてしまう人々が不思議でしょうがないんだろう。私もなんだかもうやりきれない気持ちでいっぱいになりながら読んでいたよ。だって、自分の体の一部が「消滅」しても、あっさりと受け入れてしまうんだもん。
だけども、何かをなくすってのはでもこういうことなのかもしれないとも思う。なくした側は気づかないし、それに関する記憶をなくしているから、愛着も残らないし、悲しみを感じることもできない。「消滅」したものは迷わず燃やされたり川に流されたりする。
なくしていない側は、それを理解することができないだろう。そんなジレンマ。
だけど最後、隠れ家に隠れていた、「消滅」の起こらない少数派の人たちはようやく外に出ていくことができる。なんだかその場面でちょっと希望を抱いてしまったよ。この島のその後の話も知りたいと思ってしまった。でも多分この人はそんな話は書かないだろうけれど。