はてな年間100冊読書クラブ 11冊目・12冊目

桃 もうひとつのツ、イ、ラ、ク (角川文庫)

桃 もうひとつのツ、イ、ラ、ク (角川文庫)

「ツ、イ、ラ、ク」の続編というか、対になっている作品のようです。
「ツ、イ、ラ、ク」を読んでからの方が断然楽しめると思います。
それにしても脇役にスポットを当てるのが本当に上手だなあ。この作者さんの脳内には、このお話の舞台となる架空の町「長命市」が実在するんだろうなって思ってしまいます。
以前、仕事でキャラクター作家さんとお会いする機会があったのですが、まだイラストしかない時点で既にもう、キャラ設定が細かに決まってるんだよね。脳内世界をパーッと披露されてビックリしつつも感心した覚えがあります。プロやね。
話それましたが、そんなかんじで脳内世界があるんだろうなあと思ってしまいました。その町の三丁目の角に住んでる●●ちゃんについて聞いたら、長々と生い立ちとかを話してくれるんだろうなって思えるような出来栄えです。

東京夜話 (新潮文庫)

東京夜話 (新潮文庫)

東京のいくつかの街を舞台にしたちょっと不思議なお話たち。妄想の延長みたいなインチキ臭があって、でもドリーミィでとてもいいかんじでした。
自分の存在意義に悩む「池袋」くんの愚痴を聞きながらお酒を飲んだりします。
新宿ゴールデン街でダッチワイフと酒を酌み交わしたりします。
どれも不思議で現実にはありえない話なんだけれども、この町ならもしかしたら…??って思えるようなお話ばかりで、町の個性をうまいこととらえてるなあって思いました。
そういった意味では、アメ横の話がおもしろかったなあ。「要するに飴」と称する、聞き取り不能な発音の、不気味な食べ物を売る店が出てくるのですが、あの喧騒の中にならそんな店がまぎれていても不思議ではないと思ってしまいます。
神保町の話もよかったなー。知ってる町なだけに、想像できてニンマリしたわ。あの白いじいちゃんきっとリアルにいるって。
田町の闇バーの話もよかったなあ。アパートの一室をバーに改造とか、想像しただけでわくわくするね。住宅街の中にポツンとあるお店とかホントにズキュンとくるんだから!
「先生」と呼ばれる元僧侶のホームレスとの心温まるお話もよかったです。このお話に出てくる落書きされまくりなイヌは、ぶらんこ乗りに出てくるあのわんこみたいだね。