はてな年間100冊読書クラブ 二期目 22冊目〜26冊目

羊をめぐる冒険 (上) (講談社文庫)

羊をめぐる冒険 (上) (講談社文庫)

羊をめぐる冒険 (下) (講談社文庫)

羊をめぐる冒険 (下) (講談社文庫)

最初、オシャレっぽくまわりくどい比喩や言い回しに若干の時代を感じて、ちょっぴりとっつきにくかったのだけれども、中盤に差し掛かり物語が進み始めてからは、そう気にせずにストーリーに集中して読むことができました。
運転手の爺さんが好きだなあ。神様に電話してみたい。
耳モデルのガールフレンド。それほどまでに完璧な耳っていったいぜんたいどんな耳。想像だにできないよ。
最後、主人公はすべてをなくしてしまうが、どうしてか絶望的な印象は抱かなかった。それはきっとこういうことなのかもしれない。

「僕はいろんなものを失いました」
「いや」と羊博士は首を振った。「君はまだ生き始めたばかりじゃないか」

「ねえ、十年って永遠みたいだと思わない?」

先を見ているときはそう思うけど、振り返ってみるとあっという間なものだよ。

三面記事小説

三面記事小説

実際に新聞記事になった事件を元にしたフィクション。たしかにそういう事件って、いろいろ想像したりしちゃうし、だからこそ週刊誌の記事になったりもするんだろうけども、小説にしちゃうとはまた斬新な発想だなー。
ぱっと見、なんでこうなった??っていう疑問を抱いてしまうような不可思議な事件を、きっちり日常生活に当てはめて心理を分析して、まるで見てきたかのようにリアルな展開に仕上げてしまう手腕がすごすぎる。
登場人物の気持ちが理解でき過ぎて怖いよ。読みながらけっこうへこんだわー。犯罪なんて特殊な人が起こすもんじゃない、すぐそこに存在し得るものなんだって言われているようで。
最後の「光の川」は実にやるせなくて悲しかった。

よるねこ

よるねこ

軽いオカルト(世にも奇妙な物語的な)短編集。この作者の作品は「ツ、イ、ラ、ク」シリーズしか読んだことなくて、そちらの文体がわりと特殊なかんじだったもので、こういうシンプルな文体でも書いてたんだなあとか妙なところで感心。
オカルトと言っても、一人でトイレに行けなくなるいわゆるホラーなかんじではなく、ユーモアも交えたかんじで書いてあるので怯えずに読めます。「心霊術師」が好きだったかもしれない。めぐまれない環境にある少年少女のために、はるばる木星からやってきたという心霊サービス。ある時は仙人風の姿で、ある時は保険のセールス風に現れて、お望みの幸せを与えてくれるのだ。
その他の物語も、ネットで見つけた悪魔の捕まえ方という文章を実行して、歯ぐきから毛が生えるという奇病にかかってしまう少年の話とか、寄宿舎で夜中に青い猫を見たために魂を抜かれ、情緒に欠けた女になってしまった母親の話とか。
おもしろかったです。

生者であるかぎり、死は体験できません。この世に生きている者はだれひとり、死を知らないのです。未知なるゆえに、みな、死をおそれるのです。死に対する感情はすべて、生者の側にたつものです。

膝小僧の神様 (新潮社)

膝小僧の神様 (新潮社)

小学生の女の子目線の短編集。特にドラマチックでもない日常のひとコマばかりなのだけど、なぜこんなにも子供の気持ちがリアルにわかるんだろうかーと感心。そうそう、小学生ぐらいの頃って、大人が思ってるよりも計算高いんだよね。ムフフ。
運動会の鼓笛隊の地位を獲得する苦労、台風の日の怖いけどどことなくわくわくしてしまう気持ち、デコレーションケーキへのときめき、誕生日会に誰を呼ぶかっていう悩み、どれもこれもプスプスと笑えて、懐かしい気持ちになりながら読めた。