モザイク (幻冬舎文庫)

モザイク (幻冬舎文庫)

精神病院への移送中、「渋谷の底が抜ける」という言葉を残し、逃亡した十四歳の少年は、霧雨に濡れるすり鉢の底の街に何を感じたのか? 知覚と妄想の狭間に潜む鮮烈な世界を描く、傑作長篇。

「移送屋」の仕事を始めて三年になるミミは、ある時十四歳の少年の移送を引き受ける。しかし、少年は精神病院への移送中「渋谷の底が抜ける」という謎の言葉を残して逃げてしまった。手がかりを求めて渋谷の駅前を歩くミミは「救世主救済委員会」の存在を知り、アクセスを試みるが…。知覚と妄想の狭間に潜む鮮烈な世界を描く、傑作長篇小説。

またしても読んだのは田口ランディさん。電波系三部作完結編だそうで。「コンセント」「アンテナ」も読んでるので、すべて読んだことになるね。
個人的にランディさんの文章好きなんだけど。なんか、スルスル入ってくるんだもん。私はよくサイエンスニュースとか見て、おもしろい記事があると、いろいろ妄想して楽しんだりすることがあるんだけども、そんな自分の他愛のない妄想とかをキレイにまとめてお話にしてくれてるかんじ。
しかしながら、コンセントはすごい残ったんだけど、アンテナはほとんど残ってないんだよねえ。主人公が男性だから??ってまあ、それは置いといて。
そしてこのお話。なんだろう、前の二作よりも分かりやすかった。いや、今検索してみたらけっこう賛否両論っぽいんだけど、私には分かりやすかった。
とりあえず思うことは、この人はなんでこんなにも、多くの人が(かどうかは分からないけどたぶん…少なくても自分は)漠然と感じている不安を言葉にして表現することが上手なのだろうってことです。
以下、ちょっと気取ったことを書くよ。
不安っていうのは、一種のモラトリアムのようなものなのではないかと思う。なぜなのか、どうなるのか、分からないのが「不安」というものなのであって、そのモヤモヤとしたものに輪郭がつき形になった時点で、それはもう「不安」ではなく、「悩み」とか「問題」とか、そういった解決すべきものに変わるのではないだろうかと思うのよ。
だから、不安というものを言葉で表現してそのモヤモヤとしたものに輪郭を与えてくれるこの人の作品を読むと、なんだか頭が覚醒する。
不安な事柄の原因とか解決方法を書くわけじゃない。わからないことはわからない、とちゃんと宣言している。それでも、単なるモヤモヤだったものを言葉で表現できただけでも、だいぶ輪郭が見えてくるように思う。
それともそれは、私が既に「電子レンジ人間」だからなのかしらん??w
まあ、内容で参考文献丸分かりな箇所とかもあることはあるし、ちょっと「ん??これって…」って思うようなところもあるんだけどもまあ、そのへんは引用として理解すればいいんでない??まあ、気になったのは、ロボトミー手術の桜庭事件的なフレーズのとこなんだけども。
まあ、別にストーリー全体に関わってくるようなとこではないし、いいやね。
まあなんだか、自分社会に適応できてないかも…とかって思うような人にはスルスルっと入ってくるかもしれませんwわりと後味もいいです。けっこうスピード感あって夢中で読めます。
私にとっては、かなり印象深い本でした。興味があればぜひ。
しかし、直前に「オカルト」読んどいてよかったかも。「オカルト」内に「モザイク」の構想っぽい短いエッセイみたいの載ってたから(渋谷の水脈の話とか、超能力者の日常とか)、余計にスルスルっと入ってきたのかもしれない。