はてな年間100冊読書クラブ 23冊目・24冊目

東京日記 他六篇 (岩波文庫)

東京日記 他六篇 (岩波文庫)

最初、軽くオカルトものなのだということを理解しないまま読んでいたら、意味が分からなくて、読み進めるのに苦労してしまった。が、途中で、あ!プチオカルト(すなわち世にも奇妙な物語的なお話です)なのね!ってことに気づいてからは楽しく読み進めることができました。だって、不可思議で不条理な展開の話をあまりにも当然のことのように淡々と書いているんだもの。
丸の内にあったはずのビルディングが突然なくなってしまったり(翌日には何事もなかったかのように、ある)、無人のオープンカーが走り去ったりします。
琴の門下生の女性への追悼的なお話はじんわり切なかったけれども、闇鍋で彼女の位牌を入れてしまうところがすごい。はっちゃけてる。昭和初期のパンク。
不気味で不思議な夕べの夢みたいなお話の数々が、やっぱり夕べの夢のようにボンヤリおぼろげに記憶に残りました。


人生を救え!

人生を救え!

相手が町田さんだからこんな悩みが送りつけられてくるのか、それともたまたまなのか。そもそも新聞のお悩み相談コーナーの連載だったのだよね?それでも、「テレビが壊れました」だの「妻が全然痩せません」(ドキッ!)だの「幽霊が怖い」だのと、思わずプスッと笑ってしまうような悩みが多かったです。
しかし、キテレツな答えばかりしているのかと思いきや、思ったよりも真摯に応えていらっしゃいますね。いい人だ。
とりあえず、しばらくの間笑い声は「たはは」でいきたい気分だ。(明日も覚えてるかどうか微妙だけど)
彼氏ができません、という質問に対しての答えの最後の部分にちょっとグッときた。

あなたの場合、相手を自らの拵えた型枠のごときにいちいちはめてみて、ううむ、すこし大きい、小さい、などと思っているのじゃないのかな。人間の関係というものはもっと滅茶苦茶で曖昧で、傷つくことがあるから楽しいこともあるのだ、くらいに思っていた方が友達やパートナーに恵まれると思うよ。

そうだよね。カッコイイこと言うなあ。理屈ばっかりで通るもんじゃないよね、人間なんて。

後半の、いしいしんじさんとの対談部分はゆるいかんじでおもしろかった。いしいさんの「東京夜話」に出てきた島根の元僧侶、ホームレスの「先生」の話はやっぱり実話だったのねえ。あと、いしいさんが会社員時代に所属していた部署、イメージ部が気になる。私もイメージ部の所属になりたいよ。毎日ミツアミばっかりして過ごすよ。ミチュアミ〜ミチュアミ〜つって社内を練り歩くよ。バリ人のように。
とりあえず、そうそう!とうなずいた箇所を抜き出しておきます。

(まちだ)街って、読めないんですよね。たとえば予算とか。街なかで「ここおもそろうやな、はいってみよか」いうて、それはだいたいおもろないんやけど、知らんうちにお金をつかってしまっているとか、その街に行って、金がなんぼあったらええんやというのが読めないわけ。

(いしい)それがまた、おもしろいということもあります。

(まちだ)そうそう。おばあちゃんが小唄教えてる家の隣におもろい店があったり、その隣はクリーニング屋だったり、めちゃくちゃで、人が作ってるんだけど自然発生的で。街ってそういうふうになっている。だからこそ、街はおもしろいんですけどね。

(略)

(まちだ)こういう人工的にパッケージされた場所*1って、それがないんですよ。だから予算が組みやすい。三千円やったら三千円で遊べるし、五千円やったら五千円、一万円やったら一万円で遊べる。危険がない。

あー、これ分かる。だから街歩きが好きなんだなあ。
買い物をしに行くにしても、百貨店とかのビルディングが連なってる街よりも、下北とか吉祥寺とか、足で歩いて店を探すってかんじの街が好きです。とはいえ、最近はゆっくり買い物してる時間もないしで、ファッションビルとかが多くなってしまいましたが…。
と、まあ、このお二方が言ってるのは、もっと、上野とかのディープな地域のことな気がしますが。

(まちだ)感激とか興奮ということ自体、昔から「めんどうくさい」というのがあるんです。たとえば名所、華厳の滝とか、すごいといわれているところにいくと。観光でなくったって、おいしいとされている料理屋にいった場合、なんか考えなあかんやない。ふたりでいったとして、名物のものが運ばれてきたら「どうこれ?」「おお」とか、いちいち感激しなあかんみたいな。

(いしい)反応が業務化されるというか。

(まちだ)そうそう、なんかめんどうくさいですよね。すごい川とか滝とか海とか、ディズニーランドなんてまさにそうだと思うけれど、神経をたかぶらせにいくというか、自然にたかぶってくるのはいいんですけど、あらかじめたかぶることを前提にしておいて、で、そこにあるものをみてたかぶるのは、とてもくだらない、むだなことをやっているという気がする。

あー、これもすごいわかる。
だからね、人になんかたとえばCDやら本やらをオススメするのが苦手なんだよねえ。次会ったときにその話題になるじゃんね。そうすると、もし好みじゃなかったらコメントに困るかなあとか、たとえば好みだったとしても、テンションあげて「良かったよ!」とか感想言わすのもご面倒じゃないかしら…??とかいろいろ考えてしまうのです。
逆の立場でも、ああ、期待に沿うコメントをしなくては…かといって過剰な反応するのも不自然だし…とか考えちゃうと、なんか意識しすぎて自分の純粋な感想がわかんなくなっちゃったりしてさ。アホだわ。きっと何かと自意識過剰なんですよね、自分。うへえ。
まあ、最近は昔より考えなしに、気軽に薦めたり薦められたりするようになってきましたけど。こんなかんじなら歳とるのも悪くない。つって。
会話に参加したくなるかんじの対談でした。

*1:お台場のことです