はてな年間100冊読書クラブ 45冊目

ルー=ガルー ― 忌避すべき狼

ルー=ガルー ― 忌避すべき狼

最近一生懸命読んでいた分厚い本です。
京極さんの近未来を舞台にしたお話。登場人物は14歳の少女たちがメイン。アニメ映画で見てみたいなーとか思ってたらやっぱり、漫画化されてたり、未来の設定自体をアニメ雑誌とかで募集してたようですな。こんな未来やだなーと思いつつも、ありえないこともないなと思える。
設定は違っても、京極ワールドでした。キャラクターも、おっさんと少女って違いはあるけど、キャラ付けは通じるものがあるよね。歩未が京極堂で、美緒がエノさん役かしら。歩未とか不破の台詞を読んでると、ああ、京極堂だ……って思う。理屈っぽくて時折読むのが嫌になるけど、やっぱこれがないとねえ。

異常という言葉を使う以上、まず普通という状態を規定していなければならないし、または理想的なモデルというのを想定していなければならないのである。(中略)
精神や社会といったものに普通の状態などない。それは常に変化しているものだし、尚且つ無段階の位相を持つ複雑なものである。安易に領域化してしまうことは出来ない。線引きが出来ない以上逸脱の度合いなど量れよう筈がない。

結局どこにいたって死ぬヤツは死ぬし。生きるヤツは生きる。ほっといたって―これで丸ごと自然なのに、保護だなんて驕ってる。僕らは環境や自然を保護してるんじゃない。泣いても笑っても地球に保護されてるんだ。
(中略)
生き物は生きるために生きてるんだ。
(後略)

数字で組み上がった仮想空間と違い、この現実という奴は夾雑物と不協和音で満ちている。何ひとつ予想できない。何ひとつ予定通りに運ばない。現実というやつは悉くぐちゃぐちゃで気味の悪いものなのだ。

毎度のことだが、モヤモヤっとしつつも結論が出ていなかった、なんともつかみどころのない事柄について、きちんと言葉にしてくれる京極さんはすごい。