はてな年間100冊読書クラブ 二期目 19冊目〜21冊目
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1996/11/27
- メディア: 単行本
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私は「いじめ」と言うほどひどくはないのかもしれないが、似たような目にあったことがある。相手は団体ではなくて一人の同級生の女子で、他のクラスメイトたちは私に手を差し伸べて、助けようとしてくれていた。当時の私には、そのせっかくの救いの手に応えることができなかったのだけれども。でもだから、昨今よくある、いわゆる団体による陰湿ないじめよりははるかにマシだったと思う。それでも、状況が落ち着いた後もしばらくは、人間不信のようなものや、軽い言語障害(というか酷い人見知り。慣れていない人と対峙すると思うように言葉が紡げない)に陥った。それでも、この経験によって得たものはあって、それは今の自分にとって重要なものだと感じる。
でも僕が本当に怖いと思うのは、青木のような人間の言いぶんを無批判に受け入れて、そのまま信じてしまう連中です。自分では何も生み出さず、何も理解していないくせに、口当たりの良い、受け入れやすい他人の意見に踊らされて集団で行動する連中です。彼らは自分が何か間違ったことをしているんじゃないかなんて、これっぽっちも、ちらっとでも考えたりはしないんです。自分が誰かを無意味に、決定的に傷つけているかもしれないなんていうことに思い当りもしないような連中です。彼らはそういう自分たちの行動がどんな結果をもたらそうと、何の責任も取りやしないんです。本当に怖いのはそういう連中です。
氷男は怖かった。誰とも心が通じていない場所で、そこから逃げ出せないという状況。静かな絶望。閉じ込められたりするとそれだけで呼吸困難になりがちなので、考えたくもないよ。
- 作者: タナダユキ
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2008/05
- メディア: 単行本
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- 作者: いしいしんじ
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/07/28
- メディア: 文庫
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喜び悲しみ、いろいろな事件が起きるのだけれども、すべて受け入れているかんじがすてき。
吹奏楽の楽団が話の中心に据え置かれているのだけれど、生活の中にあふれているすべての音が音楽になり得るっていう意見には激しく同意。時折、出勤の際にいつも聞いていたヘッドホンを外してみることがあった。そうすると、何か生活音がすごく新鮮に耳に入ってくるんだよね。電車の音、人の足音、話し声、車が走る音。すべての音は一音ではなく、和音なのだと気づかされる。調子っぱずれの和音って気分が悪くなったりするもんだけど、生活音は案外そうならない。そう考えるとなんというか、うまくできてるな、世の中!とか思ってしまったりして。
「へんてこってさ、あつまってくるもんなんだよ」
「もうがっこうへさ。ばいしゅんやどへさ。いなかのサーカス、いんちきなしばいごやとか、やくざもんばっかのオーケストラへさ。あつまらなくっちゃ、生きていけないって、そうおもってさ」
「生きてけない?」「当たり前だろ。めだつからな」
「へんてこはひとりじゃめだつ。めだつからぼんやりふつうにいると、ひとよりひどいめにあう。森に、ハトがたっくさんいるとすんだろ、で、なかにいちわだけ、まっしろいのがいたらさ、まっさきにワシにねらわれんのは、まちがいなくしろいハトだろ。ほかのなんばいもでっかいりんごがあったとしたら、リスやらキツツキやらは、とにかくそのりんごにかじりつこうとすんだろ、な、そういうもんなんだ、へんてこってだいたい、まっさきにひどいめにあう」
「へんてこでよわいやつはさ、けっきょくんとこ、ひとりなんだ」
「ひとりで生きてくためにさ、へんてこは、それぞれじぶんのわざをみがかなきゃなんない」
「そのわざのせいで、よけいめだっちゃって、いっそうひどいめにあうかもしんないよ。でもさ、それがわかっててもさ、へんてこは、わざをさ、みがかないわけにいかないんだよ。なあ、なんでだか、ねこ、おまえわかるか」
「それがつまり、へんてこさに誇りをもっていられる、たったひとつの方法だから」
でたらめなこの世の騒音は、たったひとつのリズムがきっかけで、目の覚めるような音楽となる。
私は昨夜の公演により、音楽についてまったく基本的な、しかし本質にかかわることを改めて教えられた。それは、
「合奏は楽しい」
ということである。冗談ではない。音楽をきくよろこびはたしかに大きい。ただ、いつのまにか私は、楽器を鳴らすよろこびを忘れていたのである。
(中略)
なにかにつながっていること、それをたしかめたい、信じたいがために、音楽家はこれまで、そしてこれからも、楽器を鳴らしつづけるのかもしれない。
たったひとつの「ひどい音」、一瞬の音とそのこだまが、あらゆる吹奏楽の音色、それまで過ごした生活のすべての彩りを、真っ暗に塗り替えてしまうってことが、この世ではまちがいなく起こり得るのだ。
最後のこれは、まるで人生みたいだ。どんなに楽しい人生を送ってきたとしても、死にざまが酷ければ、どこか可哀そうな印象がぬぐえないんじゃないかって考えたことがある。事件に巻き込まれて…とかさ。そしてそういうことはたしかに起こり得るんだろう。それまで積み上げてきた楽しい時間をぶち壊す一撃というものは十分存在するのだろう。人生はこわい。
いやいや、ホントはそんな締め方したくないんだけどな…まあいいや。